
雫「ど…ど、どうしよおお」
間違えに気が付いた私は目の前が真っ暗になった。目の前は真っ暗、頭の中は真っ白。どこでこうなってしまったのか…何を間違ったのか…とにかく今の私は冷静さを失っていた。
ママ「どうしたの雫?」
ママがお皿を拭きながら近づいて来る。溜め息をつき、静かに私を見つめる。普段からドタバタしている私にママは動揺しない。また始まったと言わんばかりの表情を浮かべている。
雫「これ見てよぉー」
ママ「んー?雫が受けた大学の合格通知じゃない。よかったじゃない。やっぱり雫は真面目だからねぇ」
雫「違うの‼学部学部‼」
ママ「あー」
私が希望したのは保育科。しかし、合格通知書に書かれているのは『政治経済学部』。私は事もあろうに入る学部を間違ってしまったのだ。確かに保育科を選択したはずなのに…。
雫「どうしよう。今から間違いましたじゃすまないよねぇ」
ママ「本当に肝心なところで抜けてるんだから…。もう受かったんだからいいじゃない何でも」
雫「よくないよぉ。私苦手なんだよ政治経済…」
ママ「ちゃんと試験受けて合格してるんだから大丈夫よ」
パパ「ふう~。んー?どうした2人とも」
お風呂上がりのパパが頭を拭きながらリビングに顔を出す。パンツ1枚でウロウロするのは何回注意しても直してくれない。
ママ「雫が学部を間違えたらしいのよ」
パパ「学部?どこに間違えたんだ?」
雫「政治経済学部……」
パパ「あははははは、いいじゃないか政治経済学部」
雫「よくないよー」
パパ「いいか雫、今時女性の政治家は珍しくない。お前も大きな夢を持って勉強すればいいさ」
雫「いや、私なるつもりないし」
パパ「いやいや、これも縁があったからだ。せっかくのチャンスを無駄にするな」
雫「はぁ…転部するしかないかなぁ」
ママ「せっかく入れたんだから少し考えてみなさい。自分に合わなければ転部を考えればいいのよ」
雫「…うん」
パパ「…雫が政治家になったら、俺の会社も…」
雫「もーしつこい」
よりにもよって一番苦手な政治経済を選んじゃうなんて…。でも、確かに試験の時に保育関係の問題は全然なかったし、政治経済の問題が異様に多かった気はした。
私は自分の部屋に戻り、ベッドに横になる。何度見ても『保育科』とは書かれてない。不安な気持ちを抱えたまま私は眠りについた。
【続】