
秋野君と入れ違いで美玖ちゃんが出ていく。
秋野君は、少し疲れたような顔をしている。
村上「面談どうだった?」
秋野「なんか色々聞かれた」
村上「面談なんだから当たり前だろ。どんなこと聞かれたとかさ」
秋野「知らね」
村上「秋野はタメにならないねぇ」
村上君が、やれやれといったジェスチャーをし、わざとらしく溜息をついた。
秋野君は、特に面談の話はせず何かを考えているようだった。
他の人には聞かれたくない事でも聞かれるのかな?
村上「あー退屈だなぁ、帰ろーかな」
座っているのに飽きてしまった村上君が、立ち上がってウロウロする。
秋野「まだ面談やってねーだろ」
村上「今日じゃなくてもいいじゃんか」
秋野「ごめんね。コイツうるさいでしょ?」
雫「全然そんなことないよ、楽しいし」
それは、本心だった。
このメンバーだったらきっと大学生活も楽しくなるって思えた。秋野君も申し訳そうな顔をしていたけど、内心はきっと楽しいんだと思う。
美玖「ただいまぁ~」
雫「お帰り美玖ちゃん。どうだった?」
美玖「んー?セクハラはなかったから大丈夫」
雫「そりゃそうでしょ」
美玖「なんだかお医者さんの問診みたい」
雫「ふーん」
美玖「次は雫だよ」
雫「うん」
賑やかなゼミ室を出て、五十嵐教授の研究室へ向かう。
研究室の扉が少し開いている。
隙間からタバコとアルコールの香りが漏れている。
ノックしようと思ったが、そのまま声をかけてみる事にした。
雫「真中です」
五十嵐「入っていいぞ」
雫「失礼しまーす」
静かに扉を開ける。
研究室の惨状は変わらず、タバコの煙が天井いっぱいに広がっている。
五十嵐教授は、丸椅子をギシギシときしませながらノートに何かを書いていた。
雫「あの…」
五十嵐「座って」
雫「はい…」
私が、目の前に座ると五十嵐教授は、私の顔をじっと見つめる。
正確には瞬きをせず瞳を見つめていた。
雫「……」
五十嵐「……」
その瞳を見ていると、なんだか落ち着く。
周りの雑音が消えていくような…。
少し眠い感じがした時、五十嵐教授が声をかけてくる。
五十嵐「名前は?」
雫「ま、真中雫です」
五十嵐「誕生日」
雫「4月29日です」
五十嵐「家族構成は?」
雫「父、母、妹の4人です」
五十嵐「両手出して」
私が両手を出すと五十嵐教授は、真剣なまなざしで両手を見つめた。
右と左を交互に見比べながら、その後も質問を続けた。
たまに同じ質問を交えつつ、聞きだした回答をノートに書きこんでいく。
【続】