後悔する新人 #13

図書室は夕日が差し込み、綺麗なオレンジ色に染まっていた。
勉強熱心な生徒たちが静かに自習をしている。

ノートに書き込む音、ページをめくる音、靴音が響くが、人の声は聞こえない。
席はほとんど埋まっている。

メモに書かれた本のタイトルを上から順に確認し、
それらしいジャンルの場所へ行って探す。

2~3冊なら図書室の係りの人に聞けばいいけど、パッと見ただけでも10冊以上はある。地道に探すしかなさそう。

せっかく見つけた検索の機械は『故障中』の紙が貼ってあり、
図書係の人も見当たらない。

とりあえず著者やそれらしいジャンルのコーナーを回ることにした。

幸い似たようなジャンルが多かったので、大半の本が同じ棚で見つかった。

しかし、どうしても最後の1冊だけが見つからない。

見つけた本を机に置き、私は席に座った。

雫「………」

図書室に来て1時間が経とうとしている。
途方に暮れた私は目をつぶり、静かにため息をつく。

雫「はぁ~」

秋野君「どうしたの?」

雫「本が、見つからないのー」

秋野君「一緒に探そうか?」

雫「そんな…悪いですよ……へ?」

知らない人に声をかけられたと思い、振り向くと隣りに秋野君が座っていた。

あまりにも突然で、その近すぎる距離に私は思考停止してしまう。

同時に体も固まってしまう。

言いかけた言葉の先を待つ秋野君が私の顔を覗き込む。

子供のような純粋無垢な瞳に私の母性が揺れ動いてしまう…。

うう、抱きしめてあげたくなる可愛さ…

秋野君「真中さん?」

雫「へ?」

秋野君「よ、よだれが…」

秋野君が、気まずそうな表情を浮かべる。私は、慌てて顔を覆う。

雫「ごご、ごめんなさい。えへへ…」

秋野君「何探していたの?講義で必要な本でもあった?」

秋野君は、よだれの件には触れず、話を戻してくれた。

私は、ハンカチで口元を抑える。

雫「ううん。五十嵐教授に頼まれた本を探してるんだけど1冊だけ見つからなくて」

秋野君が、積み重なっている本の山を見つめる。
若干いら立っているようにも見える。

秋野君「……俺たちのゼミに全然関係ないような気がするんだけど…」

雫「やっぱり?」

秋野君「真中さんをからかって遊んでるのかも…」

雫「ええええ!!酷い!!」

秋野君「あ、いや、例えばの話…」

雫「あ、そっか。そ…そうだよねー」

気が動転して冗談がわからなくなってた。

秋野君「ちょっと図書係に聞いてくるよ」

雫「あ、私が頼まれたからいいよ」

秋野君「いいからいいから」

【続】

「後悔する新人」
「調教する隣人」の真中雫が主人公のサブストーリーです。
秋野に出会う前から大学生活を送る間の物語を描いています。

小説「調教する隣人」(1)
DL.site FANZA

★小説版のみの雫ED「調教する隣人」(5)
DL.site FANZA

ゲーム「調教する隣人」
DL.site FANZA

★「後悔する新人」まとめ版★
※内容は同じです※
DL.site FANZA