
オレンジの夕焼けはより濃くなり、気温もぐっと下がったような気がする。
美玖「雫~♪」
遠くから声がする。
振り向くとポニーテールを左右に揺らしながら美玖ちゃんが手を振って走ってくる。
雫「美玖ちゃん♪」
さっき会ったばかりなのに、私たちは旧友に久しぶりに出会ったかのように両手を握りしめた。
雫「凄い汗かいてる」
美玖「走ってきちゃった、あはは」
ポニーテールで、露になったおでこに汗が滲んでいる。
雫「そんなに思い切り走ってばかりいると転んじゃうよ」
美玖「大丈夫大丈夫!!何してたの?」
雫「五十嵐教授に頼まれた本を探して、そのあと研究室に行って夢莉先輩とお話ししてたの」
美玖ちゃんは、キョトンとした顔で私を見つめる。
美玖「夢莉先輩?」
雫「ゴスロリの先輩だよ」
美玖「あー、五十嵐教授が言ってた。本当にゴスロリ着てた?」
雫「うん。そろそろ美玖ちゃんを迎えに行かなきゃって思って帰っちゃったけどね」
美玖「私のこと待っててくれたの?」
雫「そうだよ。用事がなければアルバイト先の近くで待ってようかと思ったんだけど、ごめんね」
美玖ちゃんが、飛びついてきたので私は後ろにひっくり返りそうになる。
雫「きゃあ~」
美玖「んー雫大好き~♪ありがとう♪」
雫「美玖ちゃん、喜びすぎ」
まるで外国人のようなオーバーリアクションについつい笑ってしまう。
美玖ちゃんは、本当に落ち着かない。
常にエンジン全開で、少年漫画の主人公みたい。
雫「それでアルバイトはどうだったの?」
美玖「受かったんだよ~♪」
雫「やったね♪さすが美玖ちゃ~ん♪」
美玖「褒められちゃったぁ」
美玖ちゃんは、抱きついて離れようとしない。
私も負けないくらい美玖ちゃんをぎゅっと抱きしめる。
大学生なのに小学生みたいな喜び方をする美玖ちゃんがなんだかとても可愛らしく見えた。
美玖「じゃあ、雫のお家に行こう」
雫「段ボールが山積みで、本当に片付いてないんだけど…」
美玖「大丈夫大丈夫。私も手伝うし!」
雫「美玖ちゃん、心強い」
美玖「メタルラックを説明書なしで1分以内に組み立てられるよ」
雫「すごーい」
私は、メタルラックが何かよく分からなかったけどパチパチと手を叩く。
【続】