後悔する新人 #21

美玖「お邪魔しまーす」

雫「いらっしゃーい」

美玖「うわぁ、ものすごい数の段ボール」

リビングまでの通路が丁度半分段ボールで埋め尽くされていた。

すぐに使いたいものだけを出して、それ以外は封も開けていない。

まさか、初日から友達を家に上げるなんて思ってもいなかった…。

雫「ごめんねぇ。全然手を付けてなくて、学校が落ち着いたら少しずつやろうと思ってたんだけど…」

ママと喋っているような感覚になり、ついつい言い訳っぽくなってしまう。

美玖ちゃんは、両手を腰に当て、段ボールを見渡す。

美玖「んー、雫のペースじゃ何年かかるかわからないねぇ」

雫「年!!そんなに??」

美玖「1日1箱かかってそう…」

雫「うん…」

そんなことない…そう断言できない自分が情けない…。

家のことは何もかもママに任せていたから全然ダメだ。しっかりしなきゃ。

美玖「私が、手伝うから今日中に終わらせちゃおう」

雫「今日中に終わるかなぁ…」

今日中にと考えただけで、段ボールの量が多く感じてしまう。

美玖「終わるかなぁじゃなくて終わらせるの。さぁ~やるぞ~」

雫「うん!!」

美玖ちゃんは腕まくりをすると、部屋に上がり、段ボールをチェックする。

自由奔放な美玖ちゃんだけど、積極的で前向きな姿は、とても頼りがいがある。

運動神経が良くって、すごく明るくて、優しい部活の先輩…
後輩の女子は、きっと尊敬して憧れていたに違いない。

美玖「それにしても物凄い量だねぇ…ん?」

美玖ちゃんが、手前にあった段ボールの前でしゃがみ込み、
再び立ち上がって、段ボールの山を見つめる。

美玖「………」

雫「どうかした?」

美玖「ここにあるの全部ぬいぐるみって書いてある…」

雫「あー、うん」

美玖「ちょっと多くない?」

雫「そうかな?」

美玖ちゃんが『ぬいぐるみ』と書かれた段ボールを一つ開封し、直ぐに封を閉じた。

再び段ボールの山を見渡してから深く溜息をつく。

美玖「ねぇ、雫。まさか1つの段ボールに1つしか物入れてない?」

雫「うん」

美玖「あのさー雫。普通は、1つの段ボールにまとめて入れるもんなんだよ」

雫「う~ん、確かに言われてみれば…」

言われてみれば1つの段ボールに1つしか入れてはいけないなんてルールはない。

詰め込めばもっと荷物が少なくて済んだかもしれない。

美玖「荷造りってしたことないの?」

雫「パパもママもしたことないと思う」

美玖「へー、雫って親のことをパパとママって呼んでるんだ」

雫「あ、いや、あの…お母さん」

美玖「別にいいよ。なんか本当にお嬢様って感じだねぇ」

雫「小さい頃から呼んでるから癖になっちゃったみたい」

美玖「まぁいいんじゃない?箱入りお嬢様って感じで」

雫「また、馬鹿にしてー」

美玖「あはは、ごめ~ん。とりあえず荷物を全部開けようか…
いや、その前に大きいヤツから片付けるか」

美玖ちゃんは、組み立てるのが大変そうな大きい段ボールを1か所に集める。

この手際の良さは、引っ越し初心者じゃない。

それともアルバイトでもしてたのかな?

美玖「雫―!!!ぼさっとしないのー!!!」

雫「はーい」

美玖「私は食器棚を組み立てるから、雫は小さな棚から組み立てて。
それくらいならできるでしょ?」

雫「うん!……ってまた馬鹿にされてるような気がする…」

私は、引っ越しリーダーの指示に従って、棚の入った段ボールを開封する。

【続】

「後悔する新人」
「調教する隣人」の真中雫が主人公のサブストーリーです。
秋野に出会う前から大学生活を送る間の物語を描いています。

小説「調教する隣人」(1)
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★小説版のみの雫ED「調教する隣人」(5)
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ゲーム「調教する隣人」
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★「後悔する新人」まとめ版★
※内容は同じです※
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