
日が暮れて、空が夜に包まれる少し前に私のマンションが見えた。
まだ数回しか入っていないマンションは、まだ自分の家と呼ぶには早い気がする。
美玖「おっきい~」
雫「本当に美玖ちゃんは何でも大げさなんだからぁ」
美玖「あーあ、同じ年齢で同じ性別で生まれて育ってきたはずなのに、どうしてこんなに差が出ちゃうんだろー」
雫「私の話聞いてます~?」
美玖「貧富の格差が酷い!!」
雫「また明日ねぇ」
美玖「じょ、冗談だよぉ~」
自動ドアを通り、オートロックを解除、エレベーターに乗り込む。
美玖ちゃんは「すごい」「へぇ~」とキョロキョロ周囲を見渡す。
エレベーターの扉が開くと同時に美玖ちゃんが飛び出す。
目の前の手すりを両手で掴み、思い切り前のめりになる。
雫「きゃああああああああああ」
美玖ちゃんの上半身は、完全に手すりの向こう側で、足をばたつかせる。
美玖「すごい眺め~♪」
雫「はぁ……」
私は、美玖ちゃんが落ちたと思いしゃがみ込んで動けなくなってしまう。
美玖「雫?」
雫「危ないじゃない!!気を付けてよぉ!!!」
美玖「ご、ごめーん」
美玖ちゃんは、苦笑いを浮かべて謝った。
私は、ゆっくりと立ち上がり、玄関の鍵を開けた。
常に全力で動く美玖ちゃんは、一瞬も目が離せない。
【続】