後悔する新人 #30

「雫ちゃーん」

講義室に入ると同時に大きな声で呼ばれる。

雫「え!!」

村上君が、窓際の一番後ろの席で手を振っている。

周囲を気にする様子は全くなく、他の学生たちの視線が、村上君から私へと注がれた。

高校の教室のような狭い講義室なので、村上君の声が響いて、物凄く恥ずかしい。

私は、なるべく顔を上げないように静かに入室し、村上君の隣りに座った。

村上「あれ?今日は美玖ちゃんいないの?」

雫「うん。今日も来てないみたい。単位大丈夫なのかなぁ?」

大学が楽しみだと大騒ぎしていた割に美玖ちゃんは、全然大学に来なかった。

村上「メールとかしてみたら?」

雫「一応毎日してるんだけど。アルバイトだったり、行くって言ってこなかったり」

村上君に言われて、携帯を見てみるけど、やっぱり何も来ていない。

村上「そうなんだ。でも、メールが返ってくるって事は元気って事でしょ?」

雫「そうだね」

村上「元気だったらいいんじゃない。そのうち顔出すって」

村上君が、ニッコリと笑って、私の背中を軽く叩く。

他の男子と違って、いやらしくなく、とっても清々しい感じがした。

村上君は、下心や人を陥れようという悪い心が全くない、素直で大らかな雰囲気がある。

将来は凄い大物になる人かもしれない。

雫「そういえば、村上君こそ秋野君は?いつも一緒なのに」

村上「秋野はバイトの面接に行ったんだ」

雫「そうなんだ」

村上「うん、午前中は来てたけど」

雫「へー、村上君は同じアルバイトにしないの?」

村上「うん、ちょっと考えたんだけど…」

村上君が、気まずそうに視線を逸らして、頭をポリポリとかく。

サラサラの髪が、はらりとこぼれ、鼻先に落ちる。

その髪をかき上げると、シトラスの香りが漂う。

村上「秋野がやりたいって言ったバイトが警備員の短期バイトでさー」

雫「へぇ」

秋野君が、顔を黒くしながら交通誘導をしている姿を思い浮かべてみる。

真面目で、一生懸命働いている秋野君。

雫「なんだか大変そうだね」

【続】

「後悔する新人」
「調教する隣人」の真中雫が主人公のサブストーリーです。
秋野に出会う前から大学生活を送る間の物語を描いています。

小説「調教する隣人」(1)
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★小説版のみの雫ED「調教する隣人」(5)
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ゲーム「調教する隣人」
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★「後悔する新人」まとめ版★
※内容は同じです※
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