
村上「いや、全然車の通らない場所で、ずーっと立ってるだけでいいんだって」
雫「え?それって、すごくいいんじゃ」
忙しくなくて立ってるだけ。
それで、お金がもらえるなんて条件がいいと思うんだけど…。
でも、自分がやってる状況を想像しようとするけど、全然想像が出来ない。
日焼けしちゃうし、汚れるの嫌だし、
車が飛び込んできたらって思うと怖くてできそうにない。
雫「村上君も出来るんじゃないの?」
村上「いやー、俺じっとしてるの苦手でさ~向いてないから止めたんだよ」
雫「あ、そっかぁ…」
確かに落ち着きのない村上君や美玖ちゃんじゃ、
ずっと同じ場所に立っているっていうのは辛いかもしれない。
って勝手に美玖ちゃんを思い浮かべるのは失礼かな。
村上君ならウエイターさん、バーテンダー、販売業、なんでも出来ちゃいそう
村上「だから、俺はとりあえずバイトしないつもりでいるんだ。親から仕送り貰えるし、それでのんびり過ごすことにするよ。就職したくないから大学入ったってのもあるし」
雫「そうだよね。仕送りがあればアルバイトしなくても大丈夫だもんね」
言われてみれば、何も必ずアルバイトをしなきゃいけないって決まってるわけじゃない。
パパやママが、仕送りしてくれるし、無理に働かなくても…。
でも、せっかくだから今まで自分がやったことのない事をしてみたい。
社会経験にもなるだろうから、世間知らずな私はやっていたほうがいいかも。
村上「雫ちゃんは、どんなバイトしたいの?」
村上君が、イスを近づけて、興味津々の表情で私を見つめる。
雫「う~ん。力仕事はちょっと…」
村上「コンビニの品出しとか?」
雫「あー無理無理。美玖ちゃんみたいにテキパキできないもん」
村上「じゃあレジ打ち」
雫「機械は苦手なの」
村上「ファミレスは?」
雫「手が荒れちゃうしぃ」
村上「うーん…」
村上君が腕を組み、何かを言いかけて止めてを何度か繰り返す。
村上「ち、ちなみに雫ちゃんは、バイトの条件ってある?」
雫「うーん…特にないけど…」
村上「うんうん」
雫「力仕事じゃなくて、制服は可愛くて、汚れない仕事で、あんまり大変じゃなくて、好きな時にお休みが取れて、あと出来れば他のバイトの人が優しくて、あんまり怒られないような?」
村上「……うぅ~ん、ないんじゃないかなぁ」
今まで見たことのない静かな村上君が、諦めたような、
呆れたような視線を私に向けている。
【続】