
雫「な、ないよねぇ…」
村上「これ、アルバイトの情報誌。今週のヤツだから新しいよ。俺はバイトしないから雫ちゃんにあげる」
雫「ありがとう」
村上「とりあえず一通り見てみなよ」
雫「うん」
村上「じゃあ、俺はそろそろ行くね」
雫「あれ?講義は受けないの?」
村上「あー、教科書忘れちゃったから帰るよ」
雫「あはは…」
村上「じゃあねー」
村上君は、教科書が何も入ってないであろうトートバッグを肩に下げて、講義室を出て行った。
残された私は、パラパラとアルバイトの情報誌を眺めてみる。
とこどころマーカーで丸が付いている。
村上君も美玖ちゃんもいい加減なようで実は真面目。
私も頑張らなきゃ。
※
大学の帰り道。私は、頭を悩ませながら再び商店街を歩いていた。
アルバイト情報誌のページを捲るごとに自分が恥ずかしくなった。
村上君があんな顔をするのも無理ない。
また美玖ちゃんに笑われちゃいそう。
お金を貰うんだもん、遊び半分の気持ちじゃダメだよね。
雫「うーん」
この間、通ったばかりの商店街をもう1度見て回る。
色んな人が色んな仕事をしている。
料理を作る人、料理を運ぶ人、荷物を包む人、サラリーマンにお医者さんに先生…。
みんな真剣に真面目に仕事をしている。
私にも出来るかな。アルバイトもそうだけど就職も心配…。
雫「うぅ…」
間違って入っちゃった学部のことを思い出して、少し暗い気持ちになってしまう…。
雫「あれ?どうしたんだろ?」
なにかあったのかな?
商店街の一角に人だかりができている。
若い人が何かを囲み、口々に何かを話している。
背の高い同年代くらいの男の子たちが邪魔で何があるのか見えない。
男の子A「ヤバくね?」
男の子B「いや、マジでヤバいって警察呼んだ方がよくね?」
【続】