後悔する新人 #37

今度は、私が小声で翠さんに問いかける。

雫「翠さんってやってないんですか?」

翠さん「やってないよぉ」

雫「ご、ごめんなさい。人を見た目で判断するのって失礼ですよね」

翠さん「雫ちゃん、その発言自体がすご~く失礼だよ」

翠さんが、少し寂しげな表情を浮かべた。

雫「すみません……」

私は下唇を軽く嚙み、うつむいた。

???「あれぇ?翠さんじゃないですか」

明るいさわやかな声が、私の真横から聞こえる。

声のする方に視線を向けると、細身の背の高い男性が立っている。

男性「こんなところで会うなんて奇遇ですねぇ」

ネイビーのストライプスーツをビシッと着こなした男性は、清潔感が漂っていた。

真っ赤なネクタイを締め、シルバーの腕時計が光っている。

翠さん「竜ちゃん、久しぶりだね」

竜ちゃんと呼ばれたスパイラルパーマの男性が、にこやかな笑顔を私に向け、軽く会釈をする。

私もそれに倣って会釈を返す。

竜ちゃん「初めまして、清澄竜太郎です。よろしく」

爽やかすぎる笑顔は、営業で培ったものらしく、1ミリの隙もない。

口元に笑みを残したまま、視線を私から翠さんに戻す。

翠さん「ちょうどよかったあ。実は財布と携帯をなくしちゃってさぁ」

清澄さん「はっはっは。相変わらずエキサイティングな日々を謳歌していますねぇ、翠さん」

清澄さんは、驚きも心配もせず、とても面白そうに笑っている。

反応から見て、翠さんの酷い日常にかなり精通しているようだった。

翠さん「オウカがなんだかわからないけど、とにかく困ってるの。あ、お金貸してくれない?」

清澄さん「はい。いくらですか?」

なぜ必要のかも聞かず、嫌がる素振りも見せず、清澄さんはお尻のポケットからサッと長財布を取り出す。

翠さん「ここのドリンクバー代。おごろうとしたら財布なかったんだー」

清澄さん「なるほど。では、ここは私が……」

雫「あ、大丈夫ですよ。私自分で払いますから」

私は、慌ててカバンから自分の財布を取り出す。

清澄さん「まあまあ、お気になさらず」

清澄さんは、ピン札の1万円をテーブルに置いた。

雫「こんなにしませんよ」

清澄「パフェでも召し上がってください。ここのイチゴパフェは絶品なんです。あ、パンケーキもオススメですよ」

困った私は翠さんに視線を向ける。

【続】

「後悔する新人」
「調教する隣人」の真中雫が主人公のサブストーリーです。
秋野に出会う前から大学生活を送る間の物語を描いています。

小説「調教する隣人」(1)
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★小説版のみの雫ED「調教する隣人」(5)
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ゲーム「調教する隣人」
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★「後悔する新人」まとめ版★
※内容は同じです※
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