後悔する新人 #38

翠さん「彼もこう言ってるし、とりあえずご馳走になったら?」

雫「は、はあ、じゃあいただきます」

清澄さんが、ニッコリと笑みを浮かべて、財布をしまう。

顎を左手で優しく撫でまわし、宙を見上げる。

清澄さん「では、とりあえず携帯ショップに行きましょうか」

翠さん「うん」

翠さんが立ちあがると、清澄さんが足元を見つめて首をかしげる。

清澄さん「おや、ヒールが片方しかありませんねぇ」

翠さん「あー、そうそうヒールも片方なくしちゃったんだあ」

清澄さん「お~ぅ、本当に翠さんはクレイジーですねぇ。はっはっはっは」

外国人の驚いた時のようなジェスチャーをした清澄さんは、再び洋画のワンシーンのような笑い声をあげる。

清澄さん「では、先にヒールを買って、それから携帯ショップへ参りましょうか。車を取ってきますから、お座りになってお待ちください」

清澄さんは、颯爽とレストランを出て車を取りに行く。

背筋をピンと伸ばし、歩き方もモデルのようで一切の無駄がない。

雫「凄く紳士な人ですね」

翠さん「竜ちゃん?カッコいいよねぇ。何の仕事してるんだっけかなぁ?」

翠さん「あ、名刺の裏に私の携帯番号が書いてあるから、もし興味があれば電話して」

雫「はい」

翠さんの名刺の裏には、お世辞にも綺麗とは言えない字で携帯番号が書いてあった。

翠さん「あー、でも今は携帯紛失中だから、もしかけるなら明日以降ね」

窓の外を清澄さんの車がゆっくりと通り過ぎ、入り口の手前で停車する。

ピカピカの黒塗りの乗用車は、とても普通のサラリーマンが買える車には見えない。

清澄さん「お待たせしました」

翠さん「おおっと!!」

清澄さんは、翠さんのカバンを肩にかけ、翠さんをお姫様だっこする。

清澄さん「それでは、真中さん、またお会いしましょう」

雫「え?あぁ、はい……」

清澄さんが、私にペコリとお辞儀をして、その場を立ち去ろうとする。

翠さん「雫ちゃーん。アルバイトの件、もし気になるようだったら連絡ちょうだいね~」

去って行く清澄さんの大きな背中から、
ひょっこりと顔を出した翠さんが笑顔で声をかける。

顔と反対方向では、裸足の脚がゆらゆらと揺れている。

手持ちのボタンで車の鍵を開け、後部座席に翠さんを丁寧に乗車させると、
清澄さんは運転席に乗り込み、あっという間に走り去っていった。

残された私は、自分が立っていることに気づき、席に座りなおす。

2人とも悪い人ではなさそうだけど、私には大人すぎる人たちかもしれない。

あれ?そういえば何で清澄さんは私の名前を知ってるんだろ?

【続】

「後悔する新人」
「調教する隣人」の真中雫が主人公のサブストーリーです。
秋野に出会う前から大学生活を送る間の物語を描いています。

小説「調教する隣人」(1)
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★小説版のみの雫ED「調教する隣人」(5)
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ゲーム「調教する隣人」
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★「後悔する新人」まとめ版★
※内容は同じです※
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