
美玖「そういえば、アルバイト決まった?」
雫「実は昨日……」
私は、昨日の出来事を美玖ちゃんに伝えた。
美玖「スナックかぁ」
雫「うん。誘われたんだけど、やっぱり私には難しいんじゃないかなぁって」
美玖「そうかなぁ?凄く向いてると思うんだけど?」
雫「私、覚せい剤してるように見える?」
美玖「偏見が酷い…」
雫「でも、なにをするのか想像がつかないよ」
美玖「私もあまり詳しくはないけど、オジサン相手にお酒を提供したり、話し相手になったりすればいいんじゃないかなぁ?」
雫「私、面白いこと言えないから自信ないなぁ」
美玖「別にお笑い芸人じゃないんだから面白いこと言わなくてもいいんだよ。オジサンの愚痴とかを『そうですね、うんうん』みたいな感じで聞いてあげれば」
雫「そっかぁ」
美玖「それに雫はおっとりしてるし、喋り方もゆっくりで落ち着くし、体もエッチだから人気出ると思うよ」
雫「体もエッチは余計だよ…」
美玖「でも、他によさそうなアルバイトがなければいいんじゃない?話を聞く限り変な人っぽいけど。悪い人ではなさそうだし、逆にそんな変な人でも働けるって考えれば……」
雫「そうだね。ちょっと連絡してみる」
美玖「うん、雫頑張ってね」
雫「美玖ちゃん、ありがとう」
※
数日後。
美玖ちゃんが全く大学に来なくなってしまった。最後に見かけた時から数えて2、3日はメールのやり取りをしていた。「明日は行く」「今日は無理かも」という返事を最後に連絡自体が滞ってしまい、どこで何をしているのか分からない日が続いた。私は、あまりしつこくメールをするのも迷惑だと思い、しばらく様子を見ることにした。
この日はゼミの日だった。いつものように鍵を開け、いつものように私は秋野君の隣に座った。ゼミ長と書記という立場のおかげで、私は毎回秋野君の隣に座る権利を得ていた。
村上「そういえば雫ちゃん、アルバイト決まったの?」
村上君が、口元からポロポロと菓子パンの欠片をこぼしながら聞いてくる。
秋野「お前、食べながらしゃべるなよ。汚いなぁ」
村上「悪い悪い、んぐんぐ」
雫「明日面接だよ」
村上「お!凄いじゃん!!何することにしたの?」
雫「えっと…スナック」
村上「す、スナック?」
想像もつかないような単語に村上君が、声を失う。秋野君も驚いている様子だった。
雫「街を歩いてたらね…」
事の発端を説明しようとしていたらゼミ室の扉が開き、五十嵐教授が入室してきた。
【続】