
30㎝ほどの段差の上に4畳ほどの畳があり、奥に着物やドレスがかかっている。翠さんは、ヒールを脱いで畳に上がるとかかっているドレスを1着1着見ていく。私も靴を脱いで畳に上がった。
翠さん「う~ん、赤や青って感じじゃないよねぇ。やっぱり明るい色がいいかな」
雫「あ、意外と普通のワンピースみたい」
翠さん「そうそう。スナックはキャバクラみたいにドレスじゃないから、割と普通の服っぽいでしょ?実際、私も私服で働いてることの方が多いし」
雫「でも、翠さんのドレス。かなりセクシーな感じが……」
翠さん「ああ、コレね。これはかなり古いドレス。ちょっと着るのがなくって、ママに借りてるんだ」
雫「そうなんですね」
翠さん「これしちゃって」
翠さんが、苦い顔をして何かを吐き出すようなジェスチャーをする。
雫「あ~、お客さんが吐いちゃったのが……」
翠さん「違うの。自分で飲み過ぎてゲロゲロって……」
雫「ええ……」
私は思わず顔をしかめる。
翠さんは、本当に仕事で来ているんだろうか……。
翠さん「あ!!これよくない?」
私の反応は気にせず、翠さんは1着のドレスを手に取る。
雫「可愛いですけど…結構…胸露出しませんか?」
翠さん「これくらいなら全然大丈夫だよ。着てみたら意外とそうでもないって」
翠さんが、スルメの脚をかじりながらハンガーからドレスを外す。
翠さん「じゃあ、着替えたら出てきてね」
雫「わかりました」
翠さんは私にドレスを渡すと、あくびをしながらお店に戻って行った。
※
雫「う~ん」
鏡の前で全身を見つめてみる。
雫「……」
どう見ても胸が、胸が…あまりにも強調し過ぎている気がしてならない。これじゃあ露出狂の変態だよ…。
雫「み、翠さ~ん…」
暖簾から顔を半分覗かせ、小声で翠さんを呼ぶ。
翠さん「着替えた?」
雫「はい、一応……」
そっと暖簾を開け、ママと翠さんの前に出る。
翠さん「とってもいいじゃん!!ねえ、ママ!!」
ママ「そうね。凄く似合ってるわよ、雫ちゃん」
2人は、ニコニコしながら私を褒めちぎる。
雫「ちょっと胸が出過ぎてませんか?」
ママ「気にしなくても変じゃないわ。とっても素敵よ」
翠さん「そうそう。女性の魅力全快って感じ」
同性に見られてるとはいえ、胸を露出し過ぎたドレスは下着姿と同じくらい恥ずかしい。
雫「わ、私、ちょっと着替えてきます」
翠さん「女同士なんだから、そこまで恥ずかしがらなくてもいいのに~」
ママ「まあまあ、そのうち慣れるから」
ママと翠さんが両脇に立ち、私の腕を取り、逃げられなくする。
【続】