
翠さん「ねぇねぇ、結局どうするの?」
雫「えーっと、ちょっと考えたいんですけど…」
ママ「まぁ、最初は名前がなくても大丈夫だから」
翠さん「翠2号とかは?」
雫「そんなロボットみたいなの嫌ですよ」
ママ「じゃあ貴女が2号で良いんじゃない?」
翠さん「なんで私が2号なのよ」
最初は緊張したけど、翠さんもママも優しくて、楽しい人達で安心した。まだ、自分に何が出来るか分からないけど、精いっぱい頑張ってみよう。美玖ちゃんみたいに、私は私の選択肢で人生を生きていこう。
※
ママ「せっかく着替えたんだから、お友達を呼んでみたらどう?」
雫「ええ!!」
翠さん「うん。雫ちゃんのドレス姿を見てもらおうよ」
雫「でも、お店の邪魔になっちゃうんじゃ……」
真っ先に村上君の顔が浮かんでくる……。
ママ「まだ開店まで時間があるし、ジュースやお菓子ならご馳走するわよ」
ママが優しい笑みを浮かべる。
雫「じゃあ、ちょっと連絡してみます」
私は、スマホを取り出して、秋野君と村上君にメールを送る。
雫「……」
本当なら美玖ちゃんも呼びたいところだけど……。今は、まだ距離を取っていた方がお互いのためかも。でも、きっと美玖ちゃんが来たら「雫!とっても可愛い!!お人形さんみたい!!」って抱きしめてくれると思う。
コンコンと扉をノックする音が聞こえる。
ママ「翠ちゃん、看板出してた?」
翠さん「んーん、出してないよ」
翠さんが横に首を振る。
扉が少し開き、村上君が顔を覗かせる。
村上「あのぉ~、僕たち、真中雫さんの友人なんですけど……」
雫「村上君」
村上「お、いたいた。雫ちゃん、入っても大丈夫?」
私が振り向くと、ママがニコニコしながら静かにうなずく。
雫「入っても大丈夫だって」
村上「失礼しま~す」
村上君と秋野君が、ゆっくりと扉を開けて、静かに入室する。
村上「こんにちは、村上です」
秋野「秋野です」
ママ「いらっしゃい」
少し緊張した面持ちで、2人は店内をゆっくりと見渡す。
翠さん「君、髪長いねぇ~」
入ってきた2人に翠さんが近づき、村上君の長髪を撫でる。
知らないセクシーなお姉さんに急に触れられた村上君が、一歩後ろにたじろぐ。
ママ「止めなさいよ。急に失礼じゃない」
村上「あー大丈夫です。ちょっとびっくりしちゃっただけで」
翠さん「ごめんねぇ。なんか女の子みた~い」
翠さんは、ごめんねと謝りつつも村上君の髪を触り続ける。
村上「で、でもさ。雫ちゃん、すっごく似合ってるよ」
雫「本当?」
村上「うん。普段とは全然違う感じで良いと思う。な、秋野」
【続】