後悔する新人 #47

翠さんの手からするりと抜けて、秋野君に話を振る。

秋野君は、気まずそうな顔を浮かべながら無言で頷く。

村上「ま、ちょっと……過激な感じもするけど」

雫「やっぱり、私、着替えてきます」

村上君のつぶやきに恥ずかしくなった私は、胸元を押さえてその場を離れようとする。

村上「あーいやいや。そういうわけじゃなくて。本当に似合ってる。な!!」

村上君が、秋野君の服をグイグイと引っ張る。

秋野「うん……」

秋野君は気を使っているようで、私を直視せずに視線を逸らしている。

なんだか申し訳ない気分になる。

翠さん「ほらあ、やっぱり似合ってるって。良かったじゃん。それにしても友達を誘うって言って、イケメン2人を連れてくるなんて……やるわねぇ、雫ちゃん」

翠さんが意地悪な視線を向ける。

雫「そんなんじゃないです。村上君と秋野君は、ゼミのお友達です」

翠さん「ちなみにどっちが彼氏?」

雫「だ・か・ら!!どっちも違います!!」

秋野君に好意があることを悟られないようにギュッと目をつぶり、下を向いた。顔に出ないように気を付けなきゃ。

ママ「それにしても、ずいぶん早かったわね。もしかして、一緒に来てたの?」

ママが話を変えてくれたので、翠さんの話は途中で途切れる。

翠さん「確かに凄い早かったね」

村上「なんか雫ちゃんからメールが来て、見たら…」

村上君が、秋野君に視線を向ける。

秋野「俺の借りてる部屋の下だったんだよね」

雫「え!!」

一瞬、言っている意味が理解できずに言葉に詰まる。

翠さん「秋野君って、ここの2階に住んでるの?」

秋野「はい、この真上に住んでます」

翠さん「すごーい、なんか偶然って言うか運命みたい」

運命…

ママ「だから来るのが早かったわけね。ごめんなさいね。いつもうるさいでしょう?」

秋野「いえ、もう慣れた……というか俺も音楽聞いたり、ゲームやったりしてうるさくしているので……」

翠さん「でも、2階に住んでるってことはいつでもスナックに来れるってわけね」

秋野「まあ、そうですけど。というより18歳でも働いて良いんですか?」

確かに言われてみれば、夜のお店なのに20歳未満の女の子が働いてもいいんだろうか?

ママ「女子大生なら大丈夫よ。ただ未成年だからお酒はまだね。最初は、お料理のお手伝いやお客さんのお話を聞いてくれればいいわ」

ママが私の隣に座り、緊張している私の手に自分の両手を添える。

とても温かい手だった。

雫「はい、頑張ります」

私が真剣な表情でママを見つめると、ママがニッコリと微笑む。

【続】

「後悔する新人」
「調教する隣人」の真中雫が主人公のサブストーリーです。
秋野に出会う前から大学生活を送る間の物語を描いています。

小説「調教する隣人」(1)
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★小説版のみの雫ED「調教する隣人」(5)
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ゲーム「調教する隣人」
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★「後悔する新人」まとめ版★
※内容は同じです※
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