
村上「でも、そうなると俺達はあんまり雫ちゃんの助けにはならなそうだな」
秋野「んーまぁ、まだ酒飲めないしな」
2人が顔を見合わせて、残念そうな顔を浮かべる。
翠さん「そんなこと言いながら、大学生なんだからすぐ飲んじゃうでしょ?」
村上「ですね」
村上君が、ニコニコと笑う。
ママ「雫ちゃんを雇う限りは、みんな未成年ってことは分かってるし、他のお店はともかく、ここではお酒は出せないわね。少なくとも20歳になるまでは」
翠さん「バレなきゃ別にいいんじゃなーい」
ママ「……」
翠さん「あ、そうだね。ダメだよねーやっぱり」
ママの鋭い眼光に、翠さんが発言を撤回する。
翠さんは、よほどママが怖いらしい。
ふと、ママが恐ろしい表情から一転して、何かを思いついた顔になる。
ママ「なら、1本お酒をボトルキープしてあげるわ。それで雫ちゃんが20歳になった時に飲んだらいいんじゃない?それまで取っておいてあげる」
雫「ボトルキープ…ですか?」
翠さん「ボトルキープって言うのはお酒をボトルで買って、一杯ずつお酒を飲むよりも安く多くの量を飲むこと」
雫「そういうことができるんですね」
翠さん「うん、取っておく期間は、大体3か月から半年以内ね」
秋野「じゃあ、俺が払います」
秋野君が、財布を出して払おうとする。
雫「え?そんな悪いよ。私が出します」
翠さん「雫ちゃん、キャストの子が自分で払うスナックなんてないよ」
翠さんの発言にみんなが吹き出す。
私は、恥ずかしくて黙りこくってしまった。
ママが、優しく私の肩に触れる。
ママ「雫ちゃんが20歳になった時に私からのプレゼントってことで開けましょう」
雫「嬉しいんですけど、本当に良いんですか?まだ働いてないのに……」
私とママの間に翠さんが割り込んでくる。
翠さん「ま、この人質がいる限り、雫ちゃんはスナックのアルバイトを辞められないって事ね」
翠さんが、ママの持ってきたお酒の箱を手に持って、ウンウンと頷く。
ママ「本当に嫌な子ねぇ」
ママは、嫌な子と言いつつも、翠さんの発言に対して言い返さないので、あながち間違いでもないようだった。でも、期待されているようで嬉しい。
翠さん「あ、せっかくだからボトルタグ書きなよ」
翠さんが立ちあがって、キーホルダーのようなものと油性ペンを持ってくる。
ママ「お客さんの名前を書いて、お酒のビンにぶら下げるのよ」
雫「はい」
私は、翠さんから猫の顔の形をしたボトルタグと油性ペンを受け取り、早速書いてみる。
翠さん「ん~」
【続】