もう少し頑張りましょう #8

私の家は、不思議なお店だった。

駄菓子、文房具、学校の体操服、あとはお母さんが手作りで作るクッキー。学校帰りの子供たちがお店に来て、真剣に選んだお菓子や文具を子供用の小さなかごに入れていた。お母さんは、毎日レジに立っていた。子供たちの目線の高さまで腰を下げて、カゴを受け取り、笑顔で商品を計算する。誰にでも優しいお母さんに、少し嫉妬した時もあったけど、大好きな笑顔をいつでも見ることが出来たので、私も毎日手伝いをした。

来週から私も小学校に入る。お母さんは、真っ赤なランドセルを準備してくれていた。ランドセルは箱に入っていて、斜めがけの帯で「入学おめでとう」と貼り付けられていた。お母さんは、箱から出してもいいよと言っていたけど、私は入学式の前日に開けたかった。自分でランドセルや教科書を準備したかった。私が箱を抱きしめると、お母さんは私を抱きしめてくれた。

ランドセルはピカピカだった。他の子と同じランドセルなんだろうけど、自分のランドセルは誰よりも特別な気がした。何回もランドセルを背負っては下ろした。何度もお母さんに写真を撮ってもらった。学校が楽しみで前日は全然眠れなかった。お母さんが何度も「早く寝なさいよ」と私に言う。私は、胸元につけた名札の名前に興奮していた。何回も練習して名字だけ漢字で書けるようになった。自分で書いた名札は宝物だった。

ピカピカの靴に自分で書いた名札、お母さんが作ってくれたリボンをヘアゴムにして、ツインテールにしてもらう。着ていく服は悩んだ。お店であっちがいいこっちがいいとお母さんを連れまわし、なかなか決められないでいた。それでも、お母さんは嫌な顔をせずについてきて、色や形を一緒に悩んでくれた。2人で1日お店を回って、最終的に決めたのは一番初めに入ったお店だった。お母さんは「やったね」と言って頭を優しくなでてくれた。

校門の横、入学式と書かれた看板の横で写真を撮ってもらう。他の子と比べても私は一番可愛いと思った。ランドセルは私のが一番きれいだと思ったし、お母さんが作ってくれたリボンは私しかつけていない。そして、お母さんも一番。一番優しくて、一番綺麗だと思った。お母さんは、後ろの席から小さく手を振っている。私は手を振り返し、自分の席に着いた。名前を呼ばれた時の返事もお辞儀もちゃんと出来た。緊張したけど上手に出来た。入学式が終わった後、お母さんが私の頭を撫でながら、返事とお辞儀をいっぱい褒めてくれた。大人の気分になった私は少し照れ臭かったけど、お母さんの温かい手を握るとやっぱり子供のように笑顔になってしまう。

【続】