
美玖「すごーい。なんでなんで?お母さん、なんで?」
私は興奮しながらお母さんを見上げる。お母さんはニコニコといつも通りに笑みを浮かべた。
お母さん「今日は初めての小学校だから特別よ」
朝食は私の大好きなハンバーグとポテト、小さなグラタンも付いていた。私がお母さんの料理の中で特に好きなモノが並んでいる。私は大喜びでお母さんのエプロンを引っ張る。
お母さん「さぁ、イスに座って食べようね。学校の準備は出来てる?」
私はハンバーグを頬張りながらコクコクと小さく頷く。朝食の喜びを感じつつも心臓がドキドキしていた。新しい集団生活が不安だった。友達が出来るか心配だった。
ランドセルを買いに行った時、文房具を買いに言った時、自分と同じ新1年生らしい子供がいっぱいいた。お母さんはお母さん同士で仲良くお話をしていたけど、子供同士は恥ずかしてお母さんに言われるまで挨拶すらまともにできなかった。お母さんは、次は自分から挨拶できるように頑張ろうね。と優しく教えてくれた。
お母さん「校門の近くまで一緒に行こうか?」
美玖「大丈夫。1人で行ける」
本当はお母さんと行きたい気持ちでいっぱいだったけど、我慢した。いつまでもお母さんと学校に行ってる子なんて思われたら恥ずかしい。私は真剣な顔をして断った。ちょっとお母さんが可哀想かな?とも思ったが、お母さんは凄く嬉しそうな顔をしていた。でも、よく見ると少し寂しそうにも見えた。
お母さん「美玖も大人になるんだよね」
美玖「ん?」
お母さん「あ、なんでもない。車に気を付けて、お友達と仲良くね」
美玖「はーい、行ってきます」
お母さん「先生によろしくね。わからないことがあったら誰かに聞くこと。あと知らない人にはついていっちゃダメよ」
美玖「もうわかったー」
1週間前から毎日同じことを言われ続けた私は呆れた顔をした。お母さんがそれに気づいて照れた顔をする。その顔を見て安心した私は玄関を出て、小学校へ向かう。
小学校に近づくにつれて、自分と同じ1年生の姿を見かけるようになる。高学年の子達は背が高く、大人っぽく見えた。校門をくぐり、ドキドキしながら校舎に入る。真っ白で綺麗な小学校は、地元では一番新しく綺麗な校舎だった。上履きを履き替えて、自分の教室に入る。一斉に視線が向けられる。クラスメイトはみんな緊張していて、全然会話をしていない。緊張しているのが自分だけじゃなかったので少し安心した。
机には紙が貼り付けられていた。紙にはひらがなで生徒の名前が書かれている。私は端の空席から順番に見ていった。私の苗字は後半だったので、席は窓際の方だった。
【続】