もう少し頑張りましょう #15

なかなか寝付けなかった。お母さんが何度も励ましてくれたけど、誕生日パーティーに来てくれなかった桜ちゃんと幸奈ちゃんに対する不信感はいつまで経っても消えなかった。お風呂に入っていても、明日の準備をしていてもモヤモヤした気持ちが頭の中に残る。

学校に行きたくない。心臓がドキドキする。眠れないので、寝ているお母さんに声をかけた。お母さんは目をこすりながらベッドから起き上がり、ホットミルクを作ってくれた。真っ白な牛乳に摘まんだ砂糖が溶ける。私はフーフーと冷ましながらゆっくり飲む。身体が温かくなり、緊張が少しずつほぐれ始めた。

それから、お母さんがベッドの横に座り、私とお話をしてくれた。友達や学校、今日の誕生会の話は避けて、今度の日曜日のお出かけの話をした。

お母さん「水族館と動物園、どっちがいい?」

美玖「水族館がいい」

お母さん「じゃあ電車で水族館に行こうね」

美玖「うん」

お母さん「ふふ、眠くなってきちゃった?」

美玖「うん…あったかい……」

ニッコリと笑ったお母さんがおでこから頭にかけて優しくなでてくれる。その温かい手のぬくもりに頭がぼんやりとしてくる。

お母さん「おやすみ」

返事をしようと思った時にはまぶたが閉じ、私はそのまま眠りについた。

桜ちゃんと幸奈ちゃんは、私と話してくれなくなった。私から距離をとり、私とも栞ちゃんとも違うグループに入っていた。私をチラリと見るなり気まずそうな表情を浮かべて視線を逸らす。お母さんが作ってくれたリボンもしていなかった。

栞「美玖ちゃーん、昨日はごめんね。すっかり忘れちゃってた」

席に着くと栞ちゃんがニヤニヤしながら大きな声で謝ってきた。怒りで震える身体に力を入れて我慢する。忘れちゃったと言う言葉にもニヤニヤした表情からも反省の気持ちはみじんも感じられない。明らかに私をバカにして笑っているだけだった。

美玖「いいよ。別に…気にしてないし」

何とか振り絞った声は力なく、かすれるほど弱かった。精いっぱい笑顔を浮かべたつもりだったけど、きっと上手に笑えていない。栞ちゃんは、ガッカリした私の表情に満足した様子だった。私は視線を正面に移し、机の下で両手をグーにし力を思いきり入れた。私は栞ちゃんが大嫌いだ。

【続】