
男子「なんだよそれ。気持ち悪りぃ~」
栞「ねえねえ美玖ちゃんのお母さんって妖怪なの?」
美玖「お母さんは妖怪じゃない!!」
私の両腕を萌恵ちゃんと愛衣ちゃんが押さえつける。2人は栞ちゃんのグループだった。私は懸命に振り払おうとするが、足をバタバタすることしかできない。調子に乗った栞ちゃんと意地悪な男子がお母さんだったモノをさらにグチャグチャに塗りつぶし、汚していく。角を描き、牙を描き、画鋲を顔中に刺し、空を赤く塗りつぶし、骸骨や十字架を描く。
涙がこぼれて、悔しさで訳が分からなくなっていた。自分が何を言っているのかも分からず、ただただ叫び続けた。桜ちゃんと幸奈ちゃんは、遠くから冷めた視線を送っている。可哀想な表情をしても無駄だ。怯えたふりをして被害者ぶっても無駄。助けてくれない人は敵だ。自分は関係ないと内心思ってる。
どうして誰も助けてくれないの?
私や私のお母さんが何をしたの?
許さない。絶対許さない。
栞「美玖のお母さんに似てる~」
美玖「見たことないくせに」
萌恵「見たことあるよー。文房具売ってるじゃん」
栞「そうそう。貧乏だから文房具売らないと生きていけないんだよ」
美玖「!!」
腕を押さえていた萌恵ちゃんの隙をついて、栞ちゃんの襟を掴む。
栞「触らないでよ。貧乏人」
男子「ははは、貧乏人が怒ってるぞ~」
美玖「ぐう!!」
お調子者の秀幸君がゲラゲラ笑いながら背中を思いきり蹴り飛ばし、私は床に倒れた。背中を踏みつけ、秀幸君は私の背中で両足をグリグリと動かす。私は身体を震わせながら涙を流した。
美玖「痛っ!!」
栞「貧乏人の癖にリボンなんて付けて生意気~」
美玖「返してよ!!」
野中先生「コラ、何してるの!!」
野中先生が教室に入り、栞ちゃんや意地悪グループ、秀幸君が離れていく。誰も何も言わない。全員がまるで被害者のように可哀想な顔をして席に着いている。酷い目に遭ったのは私だけなのに、なんでそんな顔が出来るの?なんで私が?
野中先生「何があったの?」
誰も何も言わない。栞ちゃんに復讐されるのが怖くて誰も何も言えないんだと思う。誰も助けてくれない。その後、何事もなかったように似顔絵が回収された。私の描いたお母さんの顔だったモノを見た野中先生の言葉は一生忘れない。そして、その感想を聞いた時の周囲の笑い声も…。
野中先生「あらら、美玖さん。お母さんとケンカでもしたのかな?前の方が良かった気もするけど、次回はもう少し頑張りましょうね」
【続】