
栞ちゃん「私たちは美玖ちゃんと仲良くなりたくて言ってるんだけど。ねー?」
愛衣ちゃん「そうそう。なんかいじめてるみたいじゃん」
萌恵ちゃん「いじめ反対~先生もダメって言ってたし」
美玖「…………」
栞ちゃん「ナジャ様って暗いし~可哀想だから遊んであげてるのに」
愛衣ちゃん「そうそう。せっかくあだ名付けてあげたのに失礼だよねぇ~」
萌恵ちゃん「ちょっとどこ行くの」
美玖「うっ!」
この場から逃げようと立ち上がった私を萌恵ちゃんが無理矢理座らせる。周囲を見渡すが、誰も私を見ていない。また始まったといった感じで自分は関係がないと知らないふりをしている。まるで自分だけが奴隷のような気分になり、私は絶望した。
三人が酷い言葉を私にぶつけ続ける。次々と汚い言葉が飛び交う。今の状態を見たらお母さんはきっと悲しむに違いない。もしかしたら、アニメのナジャ様も同じ気持ちなんじゃないか……そんな事を思った。
パープルティーンは本当に正義のヒーローなんだろうか?悪役の魔女を一人ぼっちから救ってくれないなんて。パープルティーンは悪役を痛めつけて「勝った」と笑い合う。コレって解決できてるの?魔女を助けてあげようって思わないの?
***「おーい、君ぃ」
美玖「…………」
***「あー君だよ君。おでこ出してる君」
美玖「え?」
帰り道。急に声をかけて振り向くと知らないおじさんに声をかけられた。年齢は50代前半くらい、白髪交じりの髪はボサボサで、口元の髭も白く疎らだった。肌は色黒で、身体つきはガッツリしている。眉毛はキリっとしていて目は鋭く、鼻が高い。ダボダボのTシャツに真っ赤なハーフパンツを穿いたおじさんは、、しゃがみこみ、右手でちょいちょいと私を呼ぶ。私は怪しげなおじさんを警戒しつつ近づく。
美玖「な……なんですか」
おじさん「後ろ向いて」
私が黙って背中を向けるとおじさんがランドセルから何かを剥がす。私が振り向くとおじさんは真顔で『マジョ』と書かれた紙を見せつけてくる。また、栞ちゃんが貼り付けたんだろう。私は俯き、今日の悪口を思い出して暗い気持ちになる。
おじさん「君は魔女なの?」
美玖「魔女じゃない。でも、クラスの意地悪な子が……私を、ま、魔女だって」
自分で説明するのが辛く、私はついつい泣き出してしまう。おじさんは顔色一つ変えず、腕を組み、あごの髭をゆっくりと撫でる。
おじさん「名前は何て言うんだ?」
美玖「……美玖」
おじさん「美玖ちゃん、魔女は凄いんだぞ」
美玖「え……?」
【続】