
パッと目が覚めると朝だった。汗はすっかり引き、頭痛も喉の痛みも治まっていた。上履きや机や椅子、学校に置いている持ち物がどうなっているか不安だった。朝食を食べて、マスクをして一日遅れの学校に向かう。上履きはあった。いたずらされた様子もない。教室についても私に声をかける人は誰もいない。誰も心配してくれない。桜ちゃんもグループから仲間外れにされているみたいだったけど、私にはどうでもいいことだった。
栞ちゃん「ナジャ様は昨日悪魔の会議に出てたんでしょ?」
栞ちゃんが私の椅子に座って足を組んでいる。王座に座るナジャ様のような姿に、私はどっちが悪魔だと心の中で叫んだ。
美玖「どいてよ」
栞ちゃん「人の話聞いてよ~先生に言ってるでしょ?人の話は聞きましょうって」
美玖「…………」
栞ちゃん「はいはい、どきますよ~こわ~い」
栞ちゃんが立ち上がり、萌恵ちゃんと愛衣ちゃんがニヤニヤする。机も椅子もいたずらされてない。
栞ちゃん「机の中にプレゼントがあるよーお見舞い~♪」
美玖「…………」
心臓がドキドキと高鳴る。嫌な汗が流れる。机の中に手を入れるのが怖い。
大丈夫大丈夫……。
ゆっくりと机に手を入れると何かに当たる。小さくて、軽い……。手を伸ばし、恐る恐る机の奥にあるモノを掴み、取り出す。それは5色セットのマーカーだった。
美玖「…………」
栞ちゃん「あれ?もしかして持ってた?」
美玖「持ってないけど……」
栞ちゃん「そう。信じられないかもしれないけど私心配してたんだよ~?」
美玖「…………」
栞ちゃん「よかったら使って」
美玖「うん……」
この日、栞ちゃんとそれ以上話すことはなかった。私は一日中マーカーのことで頭がいっぱいになっていた。それ以外に特に変わったことはないし、周りのみんなも普段と一緒だ。それでもモヤモヤしながら一日が終わった。掃除を済ませて、一人で帰っていると後ろから声をかけられた。振り返ると桜ちゃんが気まずそうな顔をして立っている。私は再び前を向いて歩きだす。
桜ちゃん「美玖ちゃん……待って」
美玖「…………」
桜ちゃんが私の名前を呼ぶのは凄く久しぶりだった。私は返事をせず、まっすぐに歩き始めた。友達がいなくなったからって今更私のところに来るなんて酷い。
桜ちゃん「栞ちゃんが美玖ちゃんにプレゼントしたペンは、美玖ちゃんのママのお店で盗んだやつなの!!」
【続】