もう少し頑張りましょう #28

学年が上がり、私は5年生になった。身長が少し伸びたくらいで、他には何も変わらなかった。お母さんは「大人っぽくなった」と褒めてくれたけど、別にどこも変わった様子はないと思う。しいて言えば視力が落ちて眼鏡をかけ始めたくらい。

学校は相変わらず面白くなくて、友達もできなかった。でも別に今更新しい友達が欲しいとは思わなかった。大人たちは友達が多い方が良い、外で遊ぶのが良いと子供に言うけど、好き嫌いや得意不得意が人にはある。それを無理矢理に大人が決めるのは納得できなかった。

勉強は出来ないけど体育は得意な子、勉強ばっかりりしている子、ふざけて先生に怒られてばかりの子……。私は大人しいタイプで、出来るだけ目立たないように毎日を静かに過ごしていた。今まで2年生から4年生までの間、栞と同じクラスにならないで来たが5年生でまた同じクラスになってしまった。

栞は変わっていた。1年生の頃と雰囲気が全然違かった。背が伸びただけじゃなく、眉を整えて、薄くメイクをしているようだった。清楚なワンピースに大人びた仕草をして、クラスの男子に囲まれていた。まるでお姫様のように振る舞う栞は、クラスの女子から嫌われていたが、性格の悪さをみんな知っていたので誰も栞を責めたりはしなかった。

授業以外は図書館に籠っていた。読む本のジャンルは、出来るだけ現実感のないような昔の小説やSFが好きだった。本の世界に入り込むことで、現実の嫌なことを忘れることが出来た。ただの現実逃避だったけど、私には必要な居場所だった。最初は保健室を居場所に考えたが、保険の先生はあまり好きじゃなく、そこに集まる女子も既にグループ化していて入れなかった。

美玖「………ふぅ」

続き物の冒険記の続編を適当に手に取り、特に予約しているわけでも決めているわけでもないけど、気が付けばいつも座っている席に座る。私は本を読みながら分からない単語があればノートに書き、後で調べてみる。それから感想文をノートいっぱいに書き込む。誰に見せるわけでもないけど、自分の文章には少し自信があった。自分の書きたいことが書けているし、読みやすい。いつか自分で物語を書いて本にしてみたい。そんな小さな夢が最近芽生えた。

***「ねぇ、これって本の感想?」
美玖「え?」

【続】