もう少し頑張りましょう #30

美玖「何で当然のように隣りを歩いてるの?」
月江「ねえねえ美玖はいつから一人ぼっちなの?」
美玖「人の話聞いてる?」

学校を出てからも月江はべったりで、ずっと隣りを並んで歩いてくる。身長は私と同じくらい。ランドセルの横に沢山のキーホルダーを付けている。しかし、ランドセルもキーホルダーも汚れていて、傷を付けられているものもあり、履いているスニーカーやスカートも黒い足跡が付いていた。当の本人は別段気にすることもなくヘラヘラしているが、きっと心はボロボロに傷つけられていると思った。

月江「聞いてる聞いてる。それとも、あんまり言いたくない?」
美玖「別に。小学校入ってからずっと一人ぼっちだよ。これで満足?」
月江「私も入学してからずっと一人ぼっち!やっぱり仲間じゃ~ん」
美玖「ちょっと!勝手に腕組まないでよ!」

月江は両手で私の右腕に絡みつく。こんなところをクラスの子に見られたくない。私はあからさまに嫌な顔をしたが、月江は全然気にすることなく楽しそうに笑っている。どうしてこんなに明るくて性格がよさそうな子がいじめられているのか分からない。もしかしたら可愛いから嫉妬でいじめられてるのかもしれない。

お母さん「美玖」
美玖「お母さん……」

家までの帰り道でお母さんに会う。お母さんの視線は自然と隣りの月江に向かう。

お母さん「美玖のお友達?」
美玖「ちが……」
月江「親友の月江ですっ!!」

私が否定しようとすると月江が目の前に飛び出て大きな声で遮った。お母さんは安堵したような顔を浮かべてから、ここ数年で一番嬉しそうな笑顔をした。私はむつけて俯く。子供ながらにお母さんの気持ちは分かっていた。小学校がつまらないことも友達が出来ないこともお母さんは分かっている。凄く心配していることも自分でわかっている。でも、お互いに話さないように気を遣っていた。

お母さん「そっかあ~お名前は?」
月江「月江です!」
お母さん「おんなじクラスなの?」
月江「違います」
お母さん「そうなのね~残念」
美玖「お母さん、もういいから」
お母さん「月江ちゃん、今から遊びに来ない?」
月江「行きまーす」
美玖「ええ~いいよぉ」
お母さん「美玖、恥ずかしがらなくてもいいのよ」
美玖「別に恥ずかしくなんか……」
お母さん「ホットケーキ焼いてあげるね」
月江「わ~い!ホットケーキ大好きでーす!」

月江は大喜びしながら無理矢理肩を組んでくる。楽しそうなお母さんと月江とは裏腹に私は不貞腐れた顔でとぼとぼと歩いた。

【続】