もう少し頑張りましょう #32

先生が私の名前を読み上げた時、私は自分の物語の空想で頭がいっぱいで咄嗟に返事が出来なかった。先生が再び私の名前を呼び、私は現実に引き戻される。

先生「来月の読書感想文コンクールは長谷川さんに発表してもらおうと思います」
長谷川「わ……私ですか……」
先生「長谷川さんの作文はとてもよく書けていました。クラスの代表として頑張って下さいね」
長谷川「…………」

普段は目立たない私にクラスメイトの視線が集まる。私は返事もできずに黙り込む。この学校では各クラスの代表が読書感想文を書いて発表する学校行事がある。出来れば選ばれたくなかったが、ここで断って違う人になって恨まれたらどうしよう……そんな考えが頭をよぎり、私は小さな声で「やります」と呟いた。

その日は一日読書感想文コンクールのことで頭がいっぱいで、体調が悪くなった。ようやく放課後になり、逃げるように図書館へ行く。コンクールで発表する題材の本を色々と探してみる。どんなジャンルの本でも書くのは簡単だけど人前での発表が嫌でしょうがない。先生に話して今からでも断れないだろうか……。いっそのこと当日休むなり早退するなりして……。

月江「美玖ちゃ~ん」
美玖「わっ!月江!!」
月江「あれ気が付いた???」
美玖「分かるよ……」

急に目隠しをしてきた月江に呆れる。月江はいつものように隣に座ると席をぴったりとくっつけてくきた。私がチラリと視線を向けると目が合う。月江は嬉しそうにニッコリと笑い、私は気まずくて視線をそらせる。

美玖「ねえ……」
月江「ん?」
美玖「読書感想文コンクールってあるでしょ」
月江「クラスの代表が人前に出て読むやつ?」
美玖「そう」
月江「あー来月だっけ?うちのクラスは川瀬っていう男子が読むはずだよ。でもどうして?」
美玖「私選ばれちゃったんだよね……それで断ろうかなって……」
月江「すごい!!!おめでとう!!!」
美玖「……………あ……ありがと」

いつもなら「うるさい」と月江を突き放すところだったけど、急に立ち上がって笑顔で両手を握りしめる月江に圧倒され、ついつい感謝の言葉を言ってしまった。

月江「美玖ちゃんは本が好きだから選ばれて当然だよね。私応援するね」
美玖「ちょっと待って、だから、まだやろうか悩んでるの……」
月江「悩む必要なんてないじゃん!!やろうよやろうよ!!」
美玖「だって……」
月江「どうして嫌なの?いいことじゃん!!美玖ちゃんのママも喜ぶはずだよ!!」
美玖「だって、笑われるかも……」

【続】