もう少し頑張りましょう #38

ゆっくりと目を開く。隣りに月江の姿が見える。両腕を枕にし、眼帯の裏はわからないけど多分両目をつぶりすやすやと眠っている。私達は資料集めに没頭し、色々と読みふけって眠ってしまったらしい。予測していた以上に関連する本があったので、私達は手分けして面白そうな部分、気が付かなかった部分をノートに書き込む作業をした。

月江は読書も国語も……まあ、そもそも全教科苦手だけど、一生懸命読んでくれた。眠そうな目を何度も擦り、あまり上手じゃない字でノートに書いてくれた。最初はコンクールのことで頭がいっぱいだった私だったけど、作業を進めていくうちに月江と何か一つのことを力を合わせてやることが楽しいことに気が付いた。私は眼鏡をくいっとあげて、もう一度本に集中する。

小学校とは違う少し鈍い音を立ててお昼のチャイムが鳴り響く。月江は寝ぼけた顔を上げ、「んう、今何時??」と私に尋ねた。私が「お昼だよ」と言うと、月江は目を擦りムニャムニャ言いながら背伸びをした。

月江「うわ~ごめんね。眠っちゃったよ~」
美玖「いいよ。それよりお昼にしよう」
月江「うん。美玖ちゃんは本当に本が好きなんだね~」
美玖「読んでると、ここじゃないどこかを自分が冒険してる気分になるの」
月江「美玖ちゃんは凄いね。このノートをまとめたら、きっとみんな驚くよ」
美玖「だといいけど……」
月江「広場でシートを敷いてお昼にしよ」
美玖「うん」

席を立ち、私達は広場へ出た。低学年の男の子たちが遊具で遊んでいる前を通り過ぎ、誰もいない芝生の上にシートをひく。シートは本当に小さくて二人で座るのがやっとだった。それぞれギリギリに座り、月江がお弁当を広げる。サンドイッチ、卵焼き、小さなサラダ、水筒には温かいお茶が入っていた。

美玖「美味しそう」
月江「朝、おばあちゃんと一緒に作ったの。普段はおにぎりとかお稲荷さんなんだけど、せっかくのピクニックだからってサンドイッチにしたんだ~」

嬉しそうに笑う月江を見て、私もニコニコする。また月江に「笑った」と突っ込まれるかと思ったけど、月江は一瞬ハッとしてから、まるでお母さんのように優しく微笑みかけた。こんなに楽しい時間は久しぶりだった。いつまでも、ずっとこうしていたい。サンドイッチを齧りながら、私達は今後の計画を話し合った。

【続】