
先生はそれぞれの言い分を聞くから、お友達を証人として連れてきて欲しいといった。私は月江の名前を出したけど、他のクラスの子はダメだと言われた。クラスには私の友達はいない。栞には沢山いる。もう勝ち目はなかった。全てを諦めた私は、もう自分が全部が悪いから帰りたいと言った。先生は、栞ちゃんと握手をして仲直りをしようと言った。私はとにかくもう帰りたくて、泣きながら頷いた。先生はウンウンと頷きながら肩に手を乗せてきた。この人は私の涙の理由を知らないのだと思ったら、怒りを通り越して哀れになった。
私の小学校はこの日が最後だった。クラスに私の居場所はないし、大好きな図書室へ行く理由もない。友達もいない。お母さんには何も言えなかったけど、きっと何かを察していると思う。私が行きたくないと言ったら、行きたくなるまでお家にいなさいと言ってくれた。いつもの優しい笑顔で……。
アリスは足を引きずり、凄く怖がりになってしまった。散歩には行こうとしないし、ちょっとの物音で怯えて、ギャンギャンと吠える。エサもあまり食べなくなった。何度も頭を撫でて、お願い食べてと声をかけた。私の表情をじっと見つめたアリスは元気なふりをしてエサを頬張る。でも、しばらくすると吐いてしまう。病院に行ってもストレスだと言われ、私とお母さんは困ってしまった。私とお母さんは何度も病院に連れて行ったけど、アリスはやせ細って死んでしまった。
最後の日、寝てばかりだったアリスが片足を引きずりながら、私の足元にピタリとくっついた。尻尾を力なくユラユラとさせ、私の表情をじっと見て、安心したように永遠の眠りについた。泣きじゃくり、ごめんねと何度も謝りながら冷たくなっていくアリスを強く抱きしめた。お母さんはいつものように大丈夫大丈夫と言いながら私の頭を優しく撫でてくれた。
どうしてアリスなの?
どうして私ばっかりなの?
悔しい気持ちが溢れ出す。頭の中がグチャグチャでどうしたらいいのかわからない。頭に浮かぶ大嫌いな顔が私をバカにしてる。悔しい、悔しい。でも、怖い。怖くて逃げだした私の机はきっとメチャクチャにされているだろう。写真には画鋲が刺されて、靴も持ち物も捨てられて、私やアリスの画像や動画でゲラゲラ笑っているんだ。考えれば考えるほど胃が気持ち悪くなり、私は口元を押さえトイレに駆け込んだ。お母さんが追いかけてきて背中をそっと摩ってくれた。
【続】