
月江「……」
美玖「……」
二人でお話しててと言われると何だか照れくさくて二人で黙りこくってしまう。お互いに言葉につまり、それが変で思わず吹き出してしまった。月江の口にも笑みが浮かび、私は心が温かくなるような感覚を覚えた。冷たかった手に血が巡って来るような気がする。
月江「学校は行ってるの?」
美玖「全然。まだ一回も行ってないよ」
月江「おおー美玖ちゃん不良だね。ヤンキーだ」
美玖「月江だって行ってないからヤンキーじゃん!不良だよ不良!!」
月江「じゃあ私達は不良仲間ってことだね」
美玖「そうだね……」
月江の仲間という言葉にドキドキする。私を仲間と呼んでくれる唯一の友達。自分がこの世にいてもいいと言ってくれる人。私を認めてくれる友達。
月江「そうだ。アリスは元気?またフワフワしたいなぁ~」
美玖「……アリスはもういないの」
病院で入院している月江の前で死という単語は使えなかった。月江から笑みが消え、目を包帯で隠していても動揺は隠せないでいた。月江は小さく口を開け、嘘と呟いた。月江の口からアリスという言葉を聞くと、二人でアリスと楽しく遊んだ記憶が思い出され、私はこみ上げてくる涙を抑えきれなかった。鼻を啜り、かすれるような声でごめんと呟いた私の手を月江がギュッと握りしめる。私が頭の中で巡らしている栞たちへの憎しみを月江も共感しているような気がした。言葉に出さなくてもきっと通じてる。
月江「辛かったね」
美玖「うん……」
月江「その場にいられなくてごめんね」
美玖「月江は、いつもいてくれたよ……離れていてもいてくれた……」
月江「……」
美玖「おかしいと思われるかもしれないけど……」
月江「おかしくないよ。全然おかしくない」
月江が私の手をゆっくりと摩ってくれる。そこにおばあさんがやってきて、切り分けたケーキとフルーツをテーブルに置いてくれた。そこからは三人で夕方まで話をした。私と月江が小学校の時に遊んだ話をおばあさんはニコニコしながら聞いていた。月江は私が発表会で選ばれた事、お母さんとホットケーキを作ったこと、栞たちの話は一切しなかった。
おばあさん「月江はね。美玖ちゃんの話ばっかりしてたんだよ」
美玖「そうなんですか?」
おばあさん「そうそう。こんな本を読んでた。ピクニックに行った。一緒にお菓子を食べたって」
月江「おばあちゃん、恥ずかしいから止めてよ」
おばあさん「これからも仲良くしてね」
美玖「はい、もちろんです」
月江「……」
おばあさん「いつでも来てね」
月江「……」
美玖「明日も来ていいかな……」
月江「おばあちゃん!!」
おばあさん「うん。毎日でもいいよ。月江とお話しに来てね」
美玖「はい」
月江「嬉しい……本当に嬉しいよ」
今度は私が強く月江の手を握りしめた。
【続】