
志田「長谷川さん、家で予習復習をしてますか? 貴方は他の子達よりも1年遅く通い始めたのよ? 追いつくには自習をして頑張らなきゃ。それとも1年生からやり直しますか?」
美玖「……」
道徳の時間、私は一人立たされてネチネチと志田先生からお説教を受けていた。学校に通い始めて一カ月、勉強をする習慣がなく、学校に来るのがやっとだった。一年生の教科書から勉強をしようと思ったけど、行くのと帰るのとで精一杯、体調もすぐれないので勉強どころじゃなかった。
一度正直に志田先生に話してみた。志田先生は私を見下ろして、みんなだって頑張っている、努力はするものだ、嘘をつくのは良くない、友達を作って教えてもらうべきだと一方通行の話をして私を拒絶した。翌日の帰りの会では、私の話が議題に上がり、志田先生がクラスメイトに意見を求めた。誰も手を挙げて意見を言わないので、帰りの会は長引き、帰りたい生徒たちから反感の声が聞こえた。
志田「どうして貴方は黙ってしまうの? もっと積極的に話をしなさい」
美玖「……」
志田「もういいです。座りなさい」
美玖「……」
私は精神的に追い詰められていた。私は静かに過ごしたいだけなのに、勉強だって自分なりにやろうとしているのに、どうして私だけなの……。そんな事をグルグルと考え、常に自分だけが取り残されていることに項垂れる。そんな状態で勉強なんて出来るはずがない。吐き気がしても、腹痛で気分が悪くても、目立ちたくない私は必死に堪えて、小さく震えるしかなかった。友達はいない。誰も助けてくれない。みんな傍観者で、自分じゃなくて良かったと感じている。
帰りの会が終わり、帰ろうとすると栞たちに呼び止められる。無視をして帰ろうとするが、囲まれる。これ以上は無理だと思った私は諦めて、自分の席に戻った。
栞「美玖って暗いよねー。なんで学校来てんの?」
和也「だからー。この間もお前のせいで帰れなかったし」
美玖「……」
栞「つーか黙って誤魔化すとか卑怯なんだよ」
美玖「触んないで……」
愛「ふふ、ねえ……」
栞「いいね、それ」
美玖「!!」
目の前が急に真っ暗になる。紙袋を頭に被され、私はパニックになる。後ろにいる和也が私の両肩を押さえつけ、愛が太ももを押さえつける。私は大きな声で助けを呼ぼうとするが、被された紙袋の中で自分の声が響くだけだった。ガサガサと紙袋が擦れる音、周りの笑い声、私は悲鳴をあげながら身体をバタつかせた。
【続】