もう少し頑張りましょう #65

美玖「う………うえ……」

栞「やだー美玖が吐いてる。臭いしキモい」

愛「これも写メ撮ろうよ。根暗登校拒否ゲロ記念。美玖、顔向けろ」

美玖「……」

愛「シカトかよ。マジで暗いな」

栞「カースト最下層だから仕方ないっしょ。臭いからゲロ片付けといてね」

和也「コイツ、ちょっとからかわれただけで大げさなんだよなー」

愛「そうそう、悲劇のヒロイン気取ってんじゃねーよ」

栞「換気して換気。この教室ゲロの臭いでヤバーい」

和也「ほら、雑巾。片付けとけよ」

愛「和也優しい。美玖のこと好きなんじゃね?」

和也「はあ?ゲロ吐く奴とかキモすぎだから」

栞「次、移動教室じゃん? 行こ行こ」

愛「美術の佐々岡ってデブでブサイクで超キモいよねー」

栞「言えてるーしかも臭いし、私達の足見てシコってそう」

愛「キモー。あはははは」

 三人がゲラゲラと笑いながら教室を出て行く。他のクラスメイトも遠巻きに私を一瞥し、そのまま何も言わずに教室を出て行った。私は投げつけられた雑巾で自分の吐いた物を必死に拭いた。涙が零れ、鼻水が垂れた。必死に床を拭きながら、どうして自分ばっかりがこんな目に遭うのか思いを巡らせた。涙が眼鏡に落ちて視界がぼやける。こんな日々が毎日続くと思うと、私は胃液がこみ上げてくのを感じる。

 教室を飛び出し、学校を出て行く。全身が痛い、息が苦しい。体中が発汗していて、頭の中がグシャグシャになってる。身体に張り付いた男子の汗ばんだ手の感触を思い出すと手足が震え、全身の鳥肌が立つ。私は眩暈を感じながらフラフラとした足取りで家へ向かった。学校には行けない。自分には無理だ。お母さんに言おう。全部言おう。こんなに嫌なことがあるなら、もう……。

美玖「叔母さん……?」

裕香「美玖ちゃん」

 家に帰るとお母さんの妹の裕香さんが来ていた。お母さんが病気だと聞かされ、私はまた頭が真っ白になった。お母さんの状態や将来の事、今後の生活のことについて、裕香さんが丁寧に教えてくれたけど、私は上の空でまるで夢か何かの様にフワフワした、何とも言えない気持ちになった。

裕香「体調が悪くて学校お休みしてたんでしょ?大丈夫なの?」

美玖「え、と……ちょっと、はい……」

裕香「あまり無理はしないようにね。これ、お母さんの入院している病院と部屋番号だから」

美玖「ありがとうございます……」

裕香「一人で大丈夫?何かあれば連絡してね。私も近くに住んでいれば色々お手伝い出来るんだけどごめんなさいね」

美玖「大丈夫です……」

【続】