
美玖「だって……アリスはもういないし、月江だって……」
ナジャ様「アリスちゃんは美玖ちゃんの生きている世界にはいないかもしれない。でも、亡くなった後の次の世界にはいるかもしれない」
美玖「天国とか地獄とか……そう言う事ですか?」
ナジャ様「美玖ちゃんは天国や地獄があると思う?」
美玖「……わからないです」
ナジャ様「あるかないかで答えてみて」
美玖「そんなこと言われても死んだことがないから……わからないです」
ナジャ様「じゃあアリスちゃんがいないなんて断言できないわよね。美玖ちゃんは死んだことがない。死んだことがないから死んだ後にどうなるかわからない。てことはアリスちゃんは亡くなった後も美玖ちゃんの傍にいるかもしれない」
美玖「でも、私は見えない」
ナジャ様「美玖ちゃんが見えないと言えば見えない。存在を感じる気がすれば存在していると言える。捉え方次第なのよ、全て。どれだけ栞ちゃんを恨んでも呪っても、目の前で存在している世界であれば存在し続ける。美玖ちゃんが意識し続ける限り、存在し続ける」
美玖「見えないものを信じるってことですか?」
ナジャ様「信じろとは言わないわ。それは美玖ちゃんが考えることだから」
美玖「亡くなったアリスがいるなんて言ったら、変な子じゃないですか……」
ナジャ様「それが根本的な間違いなのよねー。目に見えるものしか信じられないのは、その人の想像力が足りないから。別にいないものをいるって言ったっていいじゃない。その人にとっては存在してるんだから……」
美玖「……都合が良すぎるんじゃ……」
ナジャ様「それって誰の都合?美玖ちゃんは誰の都合で生きているの?」
美玖「それは……」
ナジャ様「生きやすいように生きればいいのよ。どちらにしても全て自分が思う通りにはいかないわ」
美玖「じゃあ、私はどうしたらいいんですか?」
ナジャ様「したいようにすればいいのよ。結局、未来も世界も変わらないから」
看護婦「……もしもし」
美玖「あ……はい……」
看護婦「お待たせしてごめんなさいね。随分ぐっすり眠っていたみたいだけど大丈夫?」
美玖「大丈夫です」
私はお母さんが入院していた病院に来て、待合室で待っている間に眠っていた。看護婦さんの後を追いかけ、お母さんが入院している病室へ入った。目の下にクマがあって、少し顔色が悪い。もともと痩せていたから、特別体調が悪いようには見えなかった。お母さんは私を見るなり、ニッコリと笑った。
【続】