
愛衣「どうせ授業終わるまで先生は来ないよ。ま、来たところでお前嫌われてるし」
栞「お前は奴隷なんだから命令に背くなよ」
美玖「……はあ、はあ……」
愛衣「またハアハア言い出した。興奮してんの?はあああ~~~はああああああ~~~」
栞「その顔キモいから。グマじゃん、あはははは」
美玖「……」
愛衣「脱がないならスカート捨てるよ」
栞「男子にあげちゃおうかな。あ、雑巾にしてグマが失禁したらコレで拭く?」
愛衣「いいね」
美玖「ぬ、ぬ、脱ぐから……」
栞「早くしろ。ブスのくせに恥ずかしがってんなよ」
遠くでバスケをやっている女子が憐れむような視線を向けているのが分かる。自分じゃなくてよかったという安心した表情、絶対に関わりたくないという気持ち……。私はオドオドしながら立ち上がり、震えながらスカートを下ろした。
愛衣「色気ねーパンツ。おばさんパンツじゃん。貧乏だからパンツも買えないの?」
栞「もしかして母親と同じパンツ穿いてるの?」
愛衣「あはははは、それウケんだけど」
栞「もっかいパスするからちゃんと取れよ」
美玖「……」
愛衣「返事っ!!」
美玖「あ、ああ、ああ……」
栞「あはははははは、マジでウケる。お前、障害者じゃん。あははは」
美玖「痛い……い、痛……」
近距離で思い切りぶつけられたボールが顎に当たり、私は顔を覆ってしゃがみ込んだ。涙が一気に溢れ出し、頭の中がパニックになる。顎を押さえ、眼鏡を拾う。ここはもうダメだ。怖い。毎日、こんな酷い目に遭わされるなら、もう……もう……。
愛衣「顔ヤバーい。目の焦点おかしくなってんだけど、キモー」
栞「グマと特別学級行った方いいんじゃなーい?」
愛衣「パンツ丸出しで泣いててダサー」
美玖「うっ……ううう~~~……」
愛衣「頭悪いし、運動もできないし、何ができるの?」
美玖「……」
栞「黙って許してもらえると思うなよーブス」
愛衣「パンツも脱がしちゃおーよ」
美玖「ダメっ!!やめてっ!!……痛っ!!」
愛衣が私の頬を平手打ちする。眼鏡が床の上を滑った。叩かれた頬と眼鏡が当たった瞼がヒリヒリと痛む。栞と愛衣は再びゲラゲラと笑う。私は信じられないといった表情で二人を見つめた。この二人は人間じゃない。悪魔だ。二人は心の底から幸せそうに、楽しそうに笑い続けた。私は呆然としていた。
【続】