
放課後。栞と愛衣がいないところを見計らって志田先生に声をかける。志田先生はいつものように溜息をつく。2階にあるカウンセリングルームで私は志田先生に今の自分がされていることを話した。志田先生は時計をチラチラ見ながら「ふーん」とか「へえー」とか適当な返事をしている。
志田「貴女はどうしたいの?」
美玖「私は普通に学校に行きたい……だけです」
志田「そんなに嫌なら無視したらいいじゃない」
美玖「無視しても無理矢理声をかけられて……」
志田「嫌って言ったら?」
美玖「そんなこと言ったら殴られるし……」
志田「あのねー。やってもみないで文句ばっかり言わないの。全然解決できないわよ。もしかして、二人とも友達になりたいのかもしれないじゃない」
美玖「そんなわけ……友達だったら、こここ、こんな酷い事……」
志田「そもそも本当にされたの?貴女の勝手な被害妄想なんじゃない?私もクラスの子をみんな見てるけどイジメなんてないわよ」
美玖「それは……いじめられてるのは……わわ、私だけだから……」
志田「だーかーらー。勝手に貴女がいじめられてるって妄想してるんじゃないのかって言ってるの。二人とも明るくていい子でしょ。ちょっとやりすぎただけでいじめられたって騒ぐのは違うんじゃない?」
美玖「だ、だって……わ、わ、私……」
志田「ハッキリ喋りなさいよ。ウジウジボソボソ。貴女のそういうところが嫌いなのよ」
美玖「……」
志田「なに?私が悪いって言いたいの?そんなに先生をいじめて楽しいんですか?」
美玖「いえ、もういいです……」
志田「あらそう。ならもう大丈夫ね?解決ってことでいいわね?これからはちょっとしたことでいちいち呼ばないでください。先生も忙しいんだから。じゃあ、鍵を閉めるから帰りなさい」
美玖「……」
外は雨だった。暗雲が空一面に広がり、畝っている。ゴゴゴゴゴと地響きのような音がどこからともなく聞こえる。傘を差し、ぬかるんだ校庭を歩きながら校門へ向かう。もう学校へ行きたくない。誰も助けてくれない。何のために行かなくちゃならないの分からない。
美玖「ひっ……」
メールの着信音が聞こえ、心拍数が一気に上がる。震える手でスマホを見ると栞からの着信が5件、『今すぐ○○公園に来い』とメールが1件来ていた。私は一人で「どうしようどうしよう」と呟きながら震えた。指が震える。呼吸が不規則になり、頭の中がグチャグチャになっていく。逃げたい。でも今逃げても意味はない。どうせ捕まっていじめられる。私は栞達に支配されていた。
【続】